猫は自由気ままで孤独を好む――そんなイメージを持たれている方も多いかもしれません。
でも実は、飼い主への深い愛情を持つ猫ほど、「ひとりの時間」が苦手になることがあります。外出時に鳴き続けたり、帰宅後に過剰に甘えたり…。そんな様子に「もしかして分離不安かも?」と感じたことはありませんか?
【体験談】地震がきっかけで分離不安に
私が飼っていた猫も、一時的に分離不安のような状態になったことがありました。きっかけは、ある日突然起きた大きな地震。
それまではほどよい距離感で過ごしていたのに、地震のあとからはトイレやお風呂までついてきて、ずっと離れようとしませんでした。外出しようとすると、玄関でニャーニャー鳴いていました。
最初は甘えてきて可愛いなと思っていました。しかし何日も続くので、これはおかしいぞ?と思いはじめました。
「この子も怖かったんだ」「安心できる場所が私なんだ」と気づいてからは、対処法を色々試してみました。すると少しずつ“ひとり時間”を過ごせるようになり、猫との絆も深まったように感じました。
猫の分離不安とは?
猫の分離不安とは、飼い主と離れることに強い不安を感じる猫の心の状態を指します。
犬ではよく知られていますが、猫にも見られる現象で、特に飼い主との絆が深い猫ほど起こりやすい傾向があります。
環境の変化、過去の不安体験、突然の出来事などがきっかけとなり、猫の心に揺れが生まれることがあります。
この状態は、猫が「安心できる存在が離れてしまう」ことに対して、強いストレスを感じているサイン。
“ひとり時間”が苦手になり、飼い主の不在に過敏に反応するようになります。
分離不安の症状
分離不安の症状は、猫の心の不安が行動として現れるものです。以下のような変化が見られることがあります。
- 外出時に鳴き続ける
- 飼い主の不在中に粗相をする
- 家具や物を壊すような行動をとる
- 帰宅後に過剰に甘えてくる
- 飼い主の行動(着替えや鍵の音)に過敏に反応する
これらの行動は、猫が「不安だよ」「ひとりが怖いよ」と伝えているサインかもしれません。

叱るのではなく、まずは「そう感じているんだね」と受け止めることが、心を整える第一歩になります。
猫の分離不安の対処方法は?
猫の分離不安に対して、飼い主ができることは?
「不安を否定せず、安心を整える」こと。
叱ったり無理に距離を取るのではなく、少しずつ“ひとり時間”に慣れていけるような環境づくりが大切です。
以下のような方法が、猫の心を整えるヒントになります。
- 安心できる居場所をつくる
お気に入りの毛布や飼い主の匂いがついたものを置いて、留守番中も安心できる空間を整えます。 - 外出前後の“儀式”を決める
出かける前に声をかける、帰宅後に決まったスキンシップをするなど、猫にとって予測できる流れをつくると安心につながります。 - 短時間の留守番から慣らす
いきなり長時間ではなく、数分〜数十分から始めて、少しずつ慣れてもらうようにします。 - 飼い主自身の感情を整える
猫は飼い主の不安や緊張を敏感に感じ取ります。飼い主が穏やかでいることが、猫にとって最大の安心材料になることも。

猫って人間の言葉がわからないと思われがちだけど、私はわかるって信じています。だから出かける時は必ず「いってくるね」と声かけしていました。
猫の分離不安において避けたい対処法
分離不安のある猫に対して、飼い主が避けたい対応もあります。猫の心を守るために、次のような行動は控えましょう。
- 叱る・怒鳴る
粗相や鳴き声は「不安だよ」「さみしいよ」のサイン。叱ることで、猫はさらに不安を感じ、信頼関係が揺らいでしまいます。 - 無視する・放置する
「慣れてもらうために放っておく」という方法は、猫にとっては“見捨てられた”と感じることも。不安が強まるだけで、改善にはつながりません。 - 急に長時間の留守番をさせる
少しずつ慣らすことが大切。いきなり長時間の不在は、猫の心に大きな負担をかけてしまいます。 - 環境をコロコロ変える
安心できる場所やルーティンがあることで、猫は落ち着きます。模様替えや生活リズムの急な変化は、分離不安を悪化させることも。 - 他の猫やペットを急に迎える
「ひとりじゃないように」と思っても、猫にとっては縄張りや関係性のストレスが加わる可能性があります。
分離不安は、猫の心の揺れが表に出たサイン。だからこそ、否定せず、そっと整えていくことが、猫との信頼を深める一歩になります。
分離不安は、猫の心の揺れが表に出たサイン。
その揺れを否定せず、そっと整えていくことで、飼い主にも猫にも優しい時間が生まれるのかもしれません。
体調に現れる分離不安のサインと、その対処法
分離不安は、猫の行動だけでなく、体調にも影響を及ぼすことがあります。
たとえば、ストレスから自分の体を舐めすぎてしまい、毛が抜けたり皮膚炎を起こす「過剰なグルーミング」。
また、嘔吐・下痢・膀胱炎など、消化器系や泌尿器系の不調が現れることもあります。

これらは「ただの甘え」ではなく、猫の心の揺れが体に表れているサイン。獣医師も、放置せず早めに対応することをすすめています。
そのような場合は、飼い主だけで抱え込まず、必要に応じて獣医師や専門家に相談することが大切です。
さいごに
猫の分離不安は、ただの「甘え」ではありません。 それは、大切な存在との距離に戸惑う、猫の心の揺れです。
鳴き声や粗相、体調の変化、そのすべてが「不安だよ」「さみしいよ」というサイン。 だからこそ、叱るのではなく、そっと受け止めてあげることが、安心への第一歩になります。

猫の「不安だよ」の声に気づけた時、私たちの暮らしも少しずつ整っていくのかもしれません。